メガリストラは修羅場化
シンガポールメディア大手、130人を即日解雇
先週木曜、シンガポールの新聞・出版の最大手、シンガポール・プレス・ホールディングス(SPH)社は、今年末までに230人のリストラを敢行する、と発表した。
もともとは昨年10月に発表済の大規模リストラ計画の一部で、全社員の10%、およそ400人を2年以内にカットする、というものだったが、ここにきて前倒し執行 の形となったようだ。
木曜の震撼の社内発表の直後には、130人に及ぶ社員に、寝耳に水の解雇通知が突き付けられ、午後六時までにオフィスを退場せよとの即日解雇が強行された。 (残る100人は12月までに円満退職を迎える予定の社員、らしい)
聞くところでは、今回のリストラ執行役のSPH社代表ウン・ヤット・チュン氏はこの9月に就任したばかりの新最高責任者(CEO)。もともとはシンガポール陸軍 に28年間、軍にて総長を務めた後、政府系投資企業テマセク・ホールディングス社へ。その後、海運大手ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)社のCEO。 NOLではコストカットで手腕を振るったことで名をあげ、その腕前を買われ、人員削減・コストカット断行のため業績不振のSPHのCEOに起用されたとか。
それにしても、メディア社員の即日大規模解雇の現場は修羅場だったようだ。
取材などを終えて、午後や夕方からオフィスに到着するジャーナリストも少なくない中、午前のCEOのリストラ発表後、IT部門は、トップからの指示に従い、解 雇対象者のシステムログイン制限処理をあまりにも迅速に実施してしまったようだ。
そのため、出社した対象社員が、まず自分のパソコンを立ち上げれないところから始まり、システムヘルプデスクに連絡、何も知らされていなかったヘルプデス クチームはあまりに多発するログイントラブルに上を下への大騒ぎ。最終的には人事部にまわされ解雇が発覚する、などというあまりにもお粗末な事態だったのだ。
オンラインメディアでは皮肉なケースがいくつか紹介されていて、
「新CEOによる大規模人員削減アナウンス」の当日の様子を写真撮影するよう指示され任務を遂行していた自社フォトグラファー彼自身が、撮影した写真を上司 に提出しようとオフィスに戻ったら自分が解雇対象者だった、とか。
部門によっては半数近くの従業員が対象になるなど、時の流れに伴い衰退を隠せない新聞メディアの苦悩がうかがえる。
今回、リストラ現場が修羅場化したのに加え、興味深かったのは、リーク情報による逐一のオンラインアップデートである。
解雇された大半がシニアジャーナリストであるがゆえか、彼らに対し、匿名性を守ることを約束した上で、「悲運のジャーナリストよ、今こそ真のリポーターと して立ち上がれ!」と内部情報のリークを積極的に促すメッセージがあちこちで流れた。
これに応じた情報提供者は後を絶たず、内部の一部社員でしか知りえない情報が、ニュース速報なみに他メディアオンラインで随時緊急報告され、会社からの 通達より先に、SNSなどで友人などの方が先に事件を知ってしまったケースも多いらしい。
あるニュースコミュニティサイトなどは、その翌朝一番こんな呼びかけをフェースブックに掲載。「不運にも首を切られてしまったSPHのみなさん、我々のサイ トではあなた方のような才能のある人材を募集中。どうぞ弊社までメッセージを!」、地獄で仏か、渡りに船か、機を見るに敏、速攻の採用情報がソーシャル ネットワークで大きく反響を呼んでいた。
この容赦なき130人解雇の翌日、SPHでは残りの社員に対し、補足集会を設けて疑問の残るリストラ手順について質疑応答に応じたようだ。だが、これも「悪夢の 13日金曜日タウンホール集会」などとオンラインでは揶揄されており、同社報道局史上最悪の解雇ニュースへの炎上コメントは、まだ少しも引く様子を見せてはいない。
詳しいレポートはこちらで。
mothership.sg
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sg.news.yahoo.com
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