シンガポール雇用市場、売り手強く3年目
希望給与額上昇、人材不足懸念の企業側
好調なシンガポール経済を受け、3年続けての低失業率が更新を続けている。このたび発表された失業率は、今年3月時点1.9%で、昨年末の2.2%をさらに下回った。
また、第一四半期の月間平均所得額も3.2%上昇。雇用機会の上昇も期待されていて、今年だけで4~8%の賃金上昇が見られるのでは、と関係者が語っているとのことだ。(6月16日付TODAY紙)
採用環境が完全な「売り手市場」が続くシンガポールは、求職者には心地よい湯加減に違いないが、採用側にとっては期待賃金額の上昇や人材不足などが懸念される。
「欲しい技術をもった人材と、実際に採用可能な人材のスキルでギャップが生じている。企業側は理想の人材を獲得するのが大変な状況だ」と言うのは、マンパワースタッフサービス地域マネージャのピーター・ハグランド氏。
シンガポール人材開発省(Ministry of Manpower: MOM)は、今年第一四半期で雇用件数の増加(28、300件)を発表、業種別ではサービス業が雇用件数第1位を占めている。
また、3月だけで54、000件の求人があった事実は、MOMが2006年3月から調査を開始して以来、1ヶ月間に見られた求人件数としては最高値であったと報告している。
欲しい人材の獲得が困難な時期を迎えている企業は、プロジェクトベースや期間を限定した契約雇用に雇用形態をシフトしつつある。
人材紹介企業ロバートハーフ社のスポークスマンは、「ニッチな技術を持った契約社員の場合は、正規社員の5~10%上乗せの賃金を期待されることもあり、不足している技術を補完するには有効なソルーションと言えよう」と強調する。
実際のケースとして、人材紹介企業ハドソン社エグゼクティブGMのジョージ・チョン氏は、「最近ある応募者が投資系銀行からS$320,000の給与オファーをもらったのですが、現在勤務している会社の上司に転職の意向を話したら引き留めされて、逆にS$340,000の給与引き上げ、プラス昇進の約束をしてもらえたのよ」と例をあげ、このところの過熱気味の雇用市場を説明している。
この状況を受け、人事サービス企業ランドスタッド社の地域ディレクタ、カリン・クラーク氏は「企業人事部の社員への才能教育や生産性向上への注力が、熱い雇用市場を緩和するのに必要不可欠だ」と言う。「サステイナブルな雇用・労働環境の維持には、既存の社員と、新たに採用するミレニアム世代双方を魅了する仕組みづくりが鍵になるだろう」。
賃金上昇と人材不足、どちらも耳に痛く聞こえる問題だが、解決のヒントは我々企業人事の工夫によりそうだ。
日本人及び日本語スピーカーの人材をお探しの際は、是非SDSまでお気軽にご相談ください。