2011年シンガポール・バジェット発表
満面笑顔のシンガポール人、渋い表情の雇用主ら
先週金曜午後3時、オフィスの皆はテレビのスイッチを入れ、2011年シンガポール予算発表、シャンムガラトナム財務相の一言一句聞きもらすべからずと、一斉に聞き耳を立てた。
注目の2011年シンガポール・バジェットこと予算発表、要約すると次の通り。
1)今年5月に政府からシンガポール成人市民へのボーナス支給あり。($S100~800)
2)今年9月からCPF(日本の厚生年金にあたる中央設立基金)の企業負担分0.5ポイントの増加(企業負担は合計16%に)
3)テレビライセンス料金の撤廃(本年度納入済分に関しては払戻し)
4)所得税納税者を対象とした税金額のカット(今年度限りの適用)
5)シンガポール市民納付所得税、来年より大幅減税
その他、低所得家族や子供向けの手当、高齢者や身体に障害を持つ市民向けの交付金などが盛り込まれていて、翌日19日の当地メイン紙ストレーツタイムズの第一面タイトルが『More than a big bonus(ビッグ・ボーナス以上)』と題されていたのにもうなずける。
その日夕方5時過ぎにテレビ発表が終わった頃には、まわりのシンガポリアンは歓喜の表情でツイッターだのフェースブックだので互いに報告しあっていた。
その一方渋い表情を見せるのは、雇用主側。
第一に、上記2のCPF負担0.5ポイント増加は、企業にとってはコスト増に他ならない。企業負担分は16%となり、これにより2003年のSARS前の基準に戻る。
CPFに関するもう一つの重大なポイントは、CPF拠出金の対象の最高額が、これまでは月給S$4500(S$4500以上はS$4500ドルと同じ額)だったのが、S$5000に変更される(S$5000以上はS$5000ドルと同じ額)。ゆえに、S$4.5Kを超える給与所得者へのCPF上乗せ分のコスト対応が早急に必要となりそうだ。
第二に、LAVY(外国人労働者賦課金)の引上げ。
建設やF&B業界など、ワーク・パーミット保有労働者の割合が大きい産業には、今回2度目の引き上げということもあって大きな影響を及ぼす引き金になりそうだ。多くの現地企業がショックを受けている、と報じらている。
具体的には、対ワーク・パーミット保有者のLAVYは、2013年7月までにS$60~200間内で上昇するという。
Expand Construction社会長のVon Lee氏は、「通常我々は300~400人の外国人労働者を雇用しており、これはかなり無情な宣告だ。明らかに政府は外国人の流入を管理する姿勢をアピールしている。しかし、LAVYの引上げは、結局は消費者向け価格に上乗せされることで、その費用が相殺するという動きにつながるのでは」とコメントしている。
Fish & Co社MDのLee氏は、「政府主導の生産性向上運動の拡大を受け、昨年より店舗にiPadを導入してオーダーをとる仕組みを確率するなど、従業員の負担軽減に取り組んできた。現在、我々は240人の外国人労働者を採用しているが、彼ら全員を現地人採用に切り替えることは不可能だ。LAVY増加によるコスト増をどう乗り切るか、解決策を練る必要がある」と話す。
Barcklays CapitalのエコノミストLeon Wai Ho氏は、「LAVYのレート上昇は大変だが、明るい側面を見るべきだ。知恵を集めてよりクリアな代替案を探すときだ」と主張している。
雇用側にとっては真剣に取り組まざるを得ない予算発表となったが、生産性向上運動導入による政府援助のメリットや高齢者活用支援などをうまく活用して、デメリットをメリットに転換してゆく姿勢が求められそうである。
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