シンガポールの就労ビザトレンド:
増加するPEP(パーソナライズド・エンプロイメント・パス)保持者
2007年から導入された、シンガポールで働く外国人向け就労バス、PEPの発行数が増加しているようだ。(6月22日付けThe Straits Times紙に掲載の、英国ファイナンスサイトHiFX社レポートによる)
記事では、MOM(シンガポール人材開発省)はPEP発行数データについては公開拒否しているが、EP(エンプロイメント・パス)保持者数については、昨年12月の時点で少なくとも11万5千人とのこと。
PEP取得には、高等教育機関を卒業し、当地シンガポールにて一定の期間就労していること、又は、当地での勤務経験がなくても海外で最低7000シンガポールドル以上の基本給を得ていたこと、が取得の条件となっている。実際には、ヨーロッパ、アジア、米国の出身国順に高く、業種別には、保険・ファイナンス、科学技術の分野での取得者が多い。
PEPは5年間有効で、EPに見られるようなスポンサー企業との雇用・非雇用の束縛を受けることがないため、就職・転職活動はよりフレキシブルになるのが特長だ。個人が現地雇用でシンガポールで働く場合には、PEPはEPよりも有利と言える。
実際、昨年はこれまでにない多くの外国人がPEPを所持した上での就職活動を実施しており、企業人事部も外国人採用時のビザ発行の事務手続きが必要ないため、この傾向に注目しているようだ。
人材紹介企業ロバート・ウォルターズ社のスペシャリスト専門部マネージャーのアダム・ボーデン氏は「確実にPEP保持者は増えている」と述べた上で、特に、昨年の不況時などには、失業してもシンガポールに滞在し続けることができた事実にふれ、彼らにとってまさに当地での滞在保険のように機能した、と有効性を強調。ただその一方で、PEPの広がりの背景については、短期間の雇用契約スタイルの増加によるものだ、ともボーデン氏は指摘した。
数ヶ月~数年といった期間限定の雇用契約の場合、就労者・雇用者ともにビザの発行・取り消しをその都度していては煩雑な手続きの繰り返しの他の何者でもない。EPがキャンセルされた場合には、30日以内のシンガポール滞在のみが許可されているため、求職者は再取得のためにあわただしい日々を送ることになる。
PEPは、このように契約期間の短期化が顕著になってきている現地の雇用トレンドにもマッチしていると言えるだろう。
英国から来星したITプロフェッショナルのスティーブン・クロスウェル氏は、2008年にPEPを取得。「万が一失業してもシンガポールに滞在し続けられる」ことがメリットだと言う。さらに「IT業界はジョブホッピングが激しいから、ビザがフレキシブルになってとても有り難い」とコメント。
米国人のアダム・ニーリー氏は、コントロールシステムエンジニア。2008年10月にシンガポールにやってきた。就職活動にあたり、観光ビザにて当地に滞在したが、その後PEPに切り替えた。「実際の就職活動に際し、PEPを持っていることで余裕をもって活動ができる」とコメントしている。
MOM国際人材開発部ディレクターのクリスティン・ロウ氏によれば、PEPは、才能ある外国人を魅了し、シンガポールに滞在維持するための統合的戦略の一環。より柔軟性のある就業スタイルの創出を確実なものにしているようだ。
PEP保持者増加のレポートと同時に紹介されていたのが、ACCA(英国勅許公認会計士協会)のグローバル経済調査内容。「いま、シンガポールへと、多くのプロフェッショナル達が世界的大移動をしている。この事実が、シンガポールという都市国家が飛ぶ鳥を落とす勢いで成長し続けていることと密接に関わっているのは間違いないだろう。確固たるビジネスマインドと総じて経済が好調であることにより、シンガポールが、他のアジア諸国を牽引する役割を果たしつつある」と引用が記されていた。
順調な経済発展とPEP効果が相乗して、当地の外国人向け労働市場はまだまだ活性化しそうな気配だ。
PEP取得についての詳細はこちらの情報からどうぞ
(http://www.edb.gov.sg/edb/sg/jp_jp/index/
Guide_to_Investing_in_Singapore/manpower/work_pass.html)
日本人及び日本語スピーカーの人材をお探しの際は、是非SDSまでお気軽にご相談ください。